師走の町 托鉢僧に合う

通勤途上、禅寺の托鉢僧の行列に合う。
幼年時代に住んでいた家の近くの、
著名な禅寺の僧侶たちである。
師走の寒空の下、素足に草履で、
「オオー」と声を上げながら足早に通り過ぎていく。




幼いころ、この「オオー」の声がどことなく怖くて、
いつも祖母の腕にしがみついて見ていた。

この声が聞こえると
急いで祖母は米びつから、米1合を升ですくってきて、
玄関に立ち、托鉢僧に寄進する。

列の中から抜けた一人の僧侶は、玄関に立ち
前垂れにその米を受け、
器用に、前垂れについた袋(ポケット)へ米を納めてから、
手を合わし、礼をする。

洗練された「おじぎ」のフォームというものがあるなら、
きっとこのようなものを言うのだろう。
祖母もそれを受けて手を合わす。






もう、半世紀も前の記憶。
確か、托鉢に回ってくる日は決まっていて
15日と28日かだったと思う。
そういえば今日も15日だ。
通勤の急ぐ足を緩め、振り返り、心の中で手を合わす。




画像

                         神戸 祥福僧堂

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