少年満州読本(長興善郎 四方田犬彦監修)

以前から満州について何かと気になることがあり、目に付いたのがこの本である。

昭和13年(1938)に日本文化協会から発行された本の復刻版で、ながらくGHQにより焚書対象となっていた本である。
内容は、日本の2人の少年が父親に連れられて、満州国を満州鉄道を利用してあちこち旅行して、日本人の新天地満州にひかれてゆくという内容である。

満州の歴史からはじまって、日本との関係、自然環境、産業、日本による資本投下の様子がわかりやすく書いてある。
当然、日本の満州統治を正当化?する視点で書いてあるのだが、そういった認識なしで読むと、「五族協和」のスローガンのもと「王道楽土」を建設しようという新生満州国の理想にひかれてゆく。ましてや、当時の少年が読んだとしたら、満州国に行くことを憧れてしまう。



当時の日本は人口増問題とそれに伴う国内資源の不足から、ヨーロッパ先進国の後を追い、海外へ進出していった経緯が見て取れる。満州においても、日露戦争後の列強との争いに苦慮した日本がやっと満州経営に乗り出し、日本人の人材を満州になんとかして送り込もうとした一つの宣伝材料がこの本として作られたのだろう。

その悲劇の一つは、満州開拓団であるのはよく知られるところであるが、この本でも、日本の農村部でいるよりは未来が見えるように書いてある。事実は領土維持のためにそこに日本人がいることが必要だったのである。満州国進出の敵として、ロシア革命後のソ連、満州に割拠した軍閥や義賊、イギリスを代表とする列強に対する日本の奮闘が語られる。






面白いのは「日本にこもっていて、何処に行っても閥や党派を作らないと気が済まない、けち臭い島国根性である日本人は満州に入れないことだ。そういう手合いがとかく日本の武力を笠にきて、弱いものをいじめたり、むやみに威張り散らして、民心を失っていくのだ。」というくだりがある。

当時の日本を正当化するわけではないが、満州経営に際し、莫大な資本投下を行い、社会インフラや統治システムを構築していったものが、戦争後も残り中国東北部(満州)の基礎になっていることも事実である。これは、他の多くの植民地主義国家が、世界各地に残していった当時の都市計画や社会インフラを見るのと同じである。

なかなか、理想と現実は大きな違いがある。世の中はきれいごとではいかないことが大半である。
いろいろ考えさせられる本である。




復刻版 少年滿洲讀本 (徳間文庫カレッジ) - 長與 善郎, 犬彦, 四方田
復刻版 少年滿洲讀本 (徳間文庫カレッジ) - 長與 善郎, 犬彦, 四方田

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