悩む力 (姜尚中)

夏目漱石の小説の登場人物を紐解きながら、漱石が生きた明治末期と現代を生きる人の共通する悩みを分析する。


漱石が生きた明治末期は、資本主義が質的に変容し、日露戦争を契機に日本という国家も世界の一等国に仲間入りするために、国家も成り上がっていく時代だった。新興のブルジョアジー、拝金主義が世の中を動かしていた。

かつて資本主義は国家のためにあるものであり、戦時中は人間の労働力も国家の統制下に置かれていた。戦後、「国民のために国がある」という方向で努力が続けられたのだが、ニートや非正規雇用が増え、多くの人々が打ち捨てられ、それも怪しくなりつつある。

前近代の西洋には「徒弟制度」があり「働く人間」を育てるシステムが機能していた。近代以降は「国家による教育制度」が「国家のための有益な人間」を作るはずであったが、そうとも言えない。教育制度に本質的な問題があるのではないか。

現代の仕事の多数を占めるサービス業は、単純労働と違ってマニュアル化しにくいため、各々の努力や工夫で頑張るしかなく、肉体も神経もすり減らしてしまう。形のないサービスは評価されにくく、頑張っても正当に評価されなければ、人は無力感にさいなまれる。


「働く」という行為で一番底にあるのは「社会の中で自分の存在を認められる」ということだ。仕事を持たないホームレスがつらいのは、自分が見捨てられていると感じることだ。働く本質は、他者からのアテンション(ねぎらい)であり、他者へのアテンションである。




意識しようといまいと、人は信ずるところから、物事の意味を供給される。(宗教のように)しかし、どれにも納得できないのなら、漱石のように自分の知性を信じて徹底抗戦しながら生きる。自分でこれだと確信できるまで悩み続けるしかない。


漱石は、生きることの意味、働く意味、人生の意味、死ぬことの意味、愛することの意味など、小説の登場人物を通して問いかけた。
現在さらなる、自由化、情報化、グローバリゼーションの中でもう一度、そういった観点で、夏目漱石の小説を読みたくなった。






悩む力 (集英社新書 444C) - 姜 尚中
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