旅いそぐ鳥の列にも 季節は空を渡るなり


この秋初めて冷え切った空気の朝
自転車通勤の信号待ち、渡り鳥が頭上を横切った。
きれいなV字型の雁行で、西のほうへ飛んで行った。
ああ、そういえば今朝、ガラス窓から川辺に鳥影を見た。
たぶんあの鳥たちが飛び立ったのだ。


詩の一節を思い出す。



 乳母車

           三好達治

 母よ――
 淡くかなしきもののふるなり
 紫陽花いろのもののふるなり
 はてしなき並樹のかげを
 そうそうと風のふくなり
     
 時はたそがれ
 母よ 私の乳母車を押せ
 泣きぬれる夕陽にむかって
 轔轔(りんりん)と私の乳母車を押せ
     
 赤い総のある天鵞絨の帽子を
 つめたき額にかむらせよ
 旅いそぐ鳥の列にも
 季節は空を渡るなり

 淡くかなしきもののふる
 紫陽花いろのもののふる道
 母よ 私は知っている
 この道は遠く遠くはてしない道

            詩集「測量船」



このような美しい雁行は、はじめて見た。
亡き母が見せてくれたのだろうか。






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