猪・鹿・狸(早川孝太郎)

早川孝太郎は、画家をめざしていたが、松岡映丘と親交があり、その兄柳田國男と出会い民俗学者となった。
この本は、三河地方横山の動物伝承を集めて、大正15年に刊行された。

この地は山と里の交流が盛んな土地柄であったため多くの話が集積した。
彼の遠野物語がそうであるように、現実と空想が混然一体となって、猟師が語る話を記録し、独自の世界を構築している。それが面白い。

「百丸の願」とは百の猪の心臓であり、狩人の目標のようなもの。
豊後大野郡の狩人世界では獲物があると臓腑を割いて心臓を取出し、かねて用意した白紙の中央に、心臓をもって赤く真ん丸に染める。これは日の丸であり、これを串につけて地に刺し祀る。この旗が翻るところがやがて神の所在で、見方によると一つの塚所であった。われわれの常に仰ぐ日の丸の趣向もこのようなところに根源があるように思う。

我々の祖先が繰り返してきた、動物との交渉も、わずかに狩の作法として残る。
猪の下顎骨を多く飾り残したり、狼のそれを魔よけとして腰に下げたりした。
明治期にかけて、多くの獣が姿を消したと同時に、我々と動物との交渉も忘れ去られた。

猪の案山子(猪除け)として、女の髪の毛を焼いたものを串にはさんで立てる。
(これなど私の祖母がネズミ除けとして、髪の毛をネズミの穴に突っ込んでいたことと同じで、猪がまだ人間を恐れていたことのことである。)

また、小屋をかけ老人がマセ木をたたいて猪を追い払った。老人は死ぬまでその仕事を進んで行った。
猪除けのお札というのもあり、「遠江の山住さん」といい、山犬(狼)の絵が描いてある。


狩人の中には平地の人が想像が及ばぬような異常な感覚と性質を持ち合わせるものがある。あたかも犬のように猪がいるかどうかがわかったという。


八妙郡能登瀬村の家では牧原御領林から不思議な裸体の男二人を連れてきて農事を手伝わせていた。

「鹿の玉」という珍宝は鶏卵大の淡紅色を帯びた玉で、これを家に秘蔵すれば金銀財宝が集まり来るという。伝えによるとたくさんの鹿が群れ集まり、その玉を角に戴き、角から角へ渡し興ずるという。これを鹿の玉遊びといい、鹿としては無上の豊楽であるという。








猪・鹿・狸 (角川ソフィア文庫)
KADOKAWA
2017-11-25
早川 孝太郎

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